漫画を読むのが趣味です。表紙やタイトルだけ見て買うことも多いので、「これは外れだったな」と思うことも多いですが、良い作品を読み終わった後の、読後感に浸っている時間がとてつもなく好きです。
今回は、今までに読んだ1巻完結漫画の中でも特に好きな「神様がうそをつく。」という漫画を紹介します。個人的には傑作と言って良い作品だと思っています。
(物語の核心や結末などには触れていません。)
タイトル:神様がうそをつく。
著者 :尾崎かおり
出版社 :講談社
目次
「神様がうそをつく。」のあらすじ
東京から転校してきた母子家庭の少年、七尾なつる。
サッカーの練習の帰り道に捨て猫を拾うが、猫アレルギーの母親に部屋を追い出されてしまう。捨て猫の扱いに途方に暮れるなつるだが、偶然クラスメイトの鈴村理生に出会う。
捨て猫を飼ってくれないか、鈴村に頼むなつる。理生は猫の養育費を払うことを条件に、捨て猫を飼うことを承諾する。なつるは理生の家に猫を連れて行くが、そこで理生が小さな弟と2人だけで暮らしていることを知る。
それから数日後、サッカーチームの新しいコーチの指導方針や、母子家庭であることに対する心無い言葉が嫌になっていたなつるは、合宿をサボって公園で弁当を食べていた。そんなときに出会ったのが、捨て猫を託したクラスメイトの鈴村理生。成り行きで理生の家に行くことになったなつるは、サッカー合宿をサボっていることを母親に隠し、理生の家で数日を過ごすことになる。
共に過ごすうちに惹かれ合う二人だが、過ごす時間が増えるに連れ、なつるは鈴村家の実状に対して違和感を感じるようになる。明かされていく秘密に対し、なつるは何を思い何をするのか。
感想
あらすじにも書いたとおり、この作品の主人公は小学生である七尾なつると鈴村理生です。
ですが、描かれるのは小学生のような幼い恋愛ではなく、もう少し大人びた過程です。
引用元:尾崎かおり「神様がうそをつく。」(講談社)
何か秘密を隠しており、時折その秘密への罪悪感を見せる理生。淡い恋心に駆られてか、そんな理生をなつるは慰め、喜ばせようとします。
そうして惹かれ合うっていく2人。小学生の恋愛とは思えないような詩的な描写が心に残ります。
引用元:尾崎かおり「神様がうそをつく。」(講談社)
小学生らしい純粋さはあるけど、大人びた恋愛模様を展開する2人の描写は個人的にかなり刺さりました。小学生の恋愛ってきっと成就しないものなんだろうと思うんですけど、それが理生の持つ秘密と相まって、より切なさを引き立たせてきます。
なつるは12歳にもなって母親の胸を揉んで落ち着いているような幼稚なところもあるんですが、理生の前では男らしく振る舞います。その彼が理生を守ろうと行動する所も、最終的にはうまく行かないんだろうという穿った視点で見てしまいます。
そうやって物語中で培った読者の切なさに対して、少しの希望を差し込んでくる最後のシーンでは、この作品を傑作と呼ぶに相応しいカタルシスが得られると思います。
最後に
というわけで「神様がうそをつく。」の感想でした。1巻完結漫画の中では1番好きかもしれません。傑作です。
尾崎かおり先生のブログがあるので、この作品の設定とか書いてないかなーと思って見に行ったんですが、特にそういう記事はありませんでした。残念!