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公害防止管理者とは?大気1種の勉強法と対策

2021年1月3日

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公害防止管理者という資格を持っているので、資格の中身やその勉強法について書こうと思う。

そんなにメジャーな資格では無いと思うが、ほぼすべての工場にこの資格所持者を置くことが義務付けられているので、持っているとそれなりに需要のある国家資格ではある。

一応本当に受かっていることを証明するため、合格証書を以下に掲載しておく(個人情報につながりそうな所は黒塗りだが)。

 

目次

 

公害防止管理者とは

公害防止管理者

公害防止管理者はその名の通り、公害を防止するため工場に置かれる人のことだ。昭和の時代に発生した公害の影響を鑑み、昭和46年に「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」が制定され、その法律の元発足した資格制度である。

基本的にほぼ全ての工場に公害防止管理者を置くことが義務付けられているので、それなりに需要のある資格となっている。

(正確には「特定工場」と呼ばれる区分に属する工場のみだが、大体の工場はこの特定工場に当てはまる。)

 

種類

公害防止管理者には以下の13種類がある。

  • 大気関係(1種~4種の4つ)
  • 水質関係(1種~4種の4つ)
  • 騒音・振動関係
  • 粉じん関係(特定粉じん、一般粉じんの2つ)
  • ダイオキシン類関係
  • 公害防止主任管理者

大気と水質は1種~4種の4つがあるが、数字が若いほど上位の資格となっている。

この中では大気1種と水質1種がメジャーで、受験者数もその2つが圧倒的に多い。

引用元:令和元年度公害防止管理者等国家試験結果(産業環境管理協会)

 

受験資格と実施時期

受験に関する制限は無い。最初から1種を受験することができる

試験の実施は年1回で、例年10月頃に開催される。合格発表は12月頃だ。

 

合格基準

例えば大気1種の場合、試験内容は以下のようになっている。

  • 公害総論(15問)
  • 大気概論(10問)
  • 大気特論(15問)
  • ばいじん・粉塵特論(15問)
  • 大気有害物質特論(10問)
  • 大規模大気特論(10問)

全75問で合格基準は60%だ。ここで気をつけたいのが、全科目合計で60%取れば良いのではなく、各科目満遍なく60%以上得点する必要があるということだ。

例えば、公害総論の正解が【8問/15問】だった場合、得点が60%に達していないので、他の5科目が満点でも不合格になる

ただし、上記のような場合、60%に達した5科目は【科目合格】の扱いとなり、2年間受験が免除されることになる。2年間は公害総論のみを受験し、60%以上得点することができれば資格取得となる。

※ちなみに試験を主催している産業環境管理協会の公式HPには「国家試験を受験し、一定の合格基準を満たしたもの」を合格とするとしか記述されていない。上記の満遍なく60%というのは、あくまで受験者の自己採点の結果、そのような基準になっているとの推測だ。無いとは思うが、今後基準が変わる可能性もある。

 

難易度

上記の令和元年度の試験結果画像を見てもらえれば分かる通り、例年の合格率は20~30%ほどでそこそこ難易度の高い資格となっている。

某資格サイトの取得難易度を参考にすると、TOEIC700点、宅建士、簿記2級と同程度の難易度とのこと。要するに、コツコツ勉強を継続できる人なら誰でも取得可能な難易度ということだ。

筆者の感覚だが、センター試験で8割以上取れていた人なら、50時間も勉強すれば合格できる難易度だと思う(センター試験が廃止された今、この例えはどうかと思うが…)。自分の能力に自信がある人は50時間くらいやっておけば確実だろう。

 

必要な勉強時間

まず、試験内容がコアすぎるので高校・大学で学んだ知識はほとんど役に立たないと思ってもらって良い(環境関連の研究をしていた人は別だが)。自分は理学部出身だが、この試験に活きた知識はほぼ無かった。この試験を受ける上では、理系・文系の分類は関係なく、同じスタートラインから勉強を始めることになる。

必要な勉強時間は勉強法やその人の能力にもよるので一概には言えないが…、確実に合格したいなら100時間を目標に勉強すべきと思う。

筆者は試験1ヶ月前から勉強を始めた。平日は1日1時間、土日はやる気が続く限りという感じで勉強を続け、合計で50時間程度勉強した結果、試験結果はギリギリ合格だった。ボーダーの60%ちょうどの科目が2科目あったりとかなりのギリギリだ。

あくまで受験後の感覚でしか無いが、1ヶ月前ではなく2ヶ月前から勉強を開始、つまり2倍の100時間程度は勉強しておけば、かなり余裕を持って合格できたと思う。

 

仕事する上で役に立つ資格だったか

(この項目はあくまで個人の感想として書くので話半分で読んでほしい。会社による違いや所属する部門によって必ず違いがあるはずだ。)

資格を取得してからのことを思い返してみる。正直言うと、仕事をする上で特に役に立つことはなかった。自分のいる会社では給与に反映されることもなかったし。

まず仕事をする上で公害に関する知識が役に立つことは早々ない。なぜなら、環境に配慮しなければならないような案件は必ず上層部や環境部門のチェックが入るからだ。公害に関するあれこれを自身で判断することはない。判断するのは環境部門だし、許可をするのは上層部。そのような体制の上では、自身の知識を活かす機会は無いし、仕事の裁量権が増えることも当然なかった。裏を返せば、環境部門に所属している人や、管理監督者の立場にある人にとっては必須の資格と言えるのではないだろうか?

ただ、1つだけメリットはあった。それは「同僚に一目置かれる」ことだ。同僚何人かでまとめて受験したのだが合格者が自分だけだったこともあり、「お前って以外にちゃんと勉強するんだな」というようなことを言われたと思う。自尊心を満たすのには役立ったかな、と。

転職市場で役に立つかどうかは、転職したことが無いので何とも言えないが、役に立たないということは無いのではないだろうか。少なくとも「ちゃんと勉強する奴」という印象は与えられると思う。

まとめると、何かしらのメリットを期待してこの資格を取得することはオススメできない。工場に勤めるものの常識として取得しておく、くらいの感覚でいる方が良いと思う。

 

試験内容

試験内容だがほぼ暗記科目と思ってもらって良い。共通科目である公害総論の例題を以下に記載しておく。

廃棄物に関する記述として、誤っているものはどれか。

(1) 産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物及び輸入された廃棄物をいう。

(2) 平成24年度における産業廃棄物の総排出量は約3億8千万トンであり、ここ数年減少傾向にある。

(3) 事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

(4) 都道府県は区域内の一般廃棄物の処理責任を負う。

(5) 一般廃棄物には、し尿も含まれる。

引用元:平成28年度 公害防止管理者等国家試験 公害総論

読んでもらえば分かる通り、完全に暗記ものだ。ただ一般常識で推測できる部分もある。この問題だと(3)なんかは常識的に考えて正しい記述だろうとわかる(ちなみに(4)が誤り)。

上記は共通科目である公害総論の問題だが、大気関連ならば以下のような専門的な問題が出題される。

大気中の乱流に関する記述として、誤っているものはどれか。

(1) 大気中の大小さまざまな乱流の強さは、それぞれの風速成分の平均値で表される。

(2) 水平及び鉛直方向の乱流の強さは、それぞれの風速成分の平均値で表される。

(3) 地表面摩擦により風速の鉛直勾配が生じ、強制対流による乱流が発生する。

(3) 日射で温められた地表面上には自由対流が生じ、乱流を発生させる。

(5) 風向きの時間的変化、気流の蛇行も乱流の一種といえる。

引用元:平成28年度 公害防止管理者等国家試験 大規模大気特論

ここまでくると一般常識で推測するのは不可能だ。暗記するしかない(ちなみに(2)が誤り)。が、ただ暗記するだけでは量が膨大過ぎるので、なるべく負担が少ないと思われる勉強法を以下に記載しておく。

 

勉強法

筆者がオススメする勉強法は以下だ。

  1. 市販テキストを1周し、一通り知識を入れる
  2. 過去問を1年分解く
  3. 過去問で出た部分を公式テキストでチェックし、該当する節を読み込む
  4. 違う年の過去問を解く
  5. 3~4を繰り返す

理由を以下で説明していく。

 

1. 市販テキストを1周し、一通り知識を入れる

まず試験問題は基本的に全て産業環境管理協会の公式テキストから出題される。「新・公害防止の技術と法規」という分厚いテキストが売っているので、これを読めば良い。

しかしこのテキスト、合計で1000ページ以上もある。普通に勉強し内容をそこそこ覚えようとするととんでもない時間がかかる。なのでそこは内容を抜粋している市販テキストで代用する。

「公害防止管理者試験 大気関係 合格テキスト」等が無難で良いと思う。

 

2. 過去問を1年分解く

市販テキストを1周すればある程度過去問が解けるようになっているはず。なのでとりあえず過去問を1年分解いてみる。

おそらく合格点には届かないと思うが、過去問を解いて傾向を知っておくことがかなり重要になるので、なるべく早い段階で一度過去問を解いておきたい(この段階で合格点に達している人はあとは過去問をやるだけで十分なレベルだと思う)。

 

3. 過去問で出た部分を公式テキストでチェックし、該当する節を読み込む

過去問を解いたあとは公式テキストの出番。この作業がかなり重要になる。なぜなら公害防止管理者試験は出る分野がほぼ固定だからだ。

公式テキストは1000ページほどあるが、出題に用いられるのはその3分の1も無いのではないだろうか?つまり過去問を解き出題部分を公式テキストでチェックするのは、出題される分野を明確にするためだ。

出題部分が分かるようテキストにマーカーを引く、出題回数が分かるよう正の字でメモる、など公式テキストに直接書き込むんではっきりと分かるようにしたい。

もちろんチェックした後は該当節全体に目を通しておく。

 

4. 違う年の過去問を解く

公式テキストの該当節を読んだ後に違う年の過去問を解くと、同じ分野からの出題が多いことが分かると思う。3でチェックした節を読み込んでおくことで得点できる問題もあるはず。

 

5. 3~4を繰り返す

3~4を繰り返し公式テキストにチェックを続けていると、出題される部分とされない部分がはっきり分かれてくるはずだ。チェックしなかった部分はほぼ出ないので、読まなくて良い

 

注意点

上記の方法だと「市販テキスト」「公式テキスト」「過去問」の3つを使うことになるのだが、新品で全て揃えようとすると2万円ほどかかる

なのでメルカリなどで中古品を漁るのがオススメ。ただしなるべく最新年度のテキストを購入することをオススメする。なぜなら古いテキストでは法律が改定前だったり、記載データ自体が古いものだったりし、間違った知識を得てしまう可能性があるからだ。

また、基本的には暗記に頼ったやり方なので、1年後も覚えているかと言われると微妙な手法だ。あくまで最短で資格取得する上での手法となる。この資格で勉強したことを活用したいという意思がある方は、公式テキストを読み込みつつ原理をネットで調べるなど、本質まで踏み込んで勉強すべきと思う。

 

最後に

上記の勉強法を1ヶ月、50時間程度行った結果、筆者の得点は以下のような感じ。

科目 得点 合否
公害総論 15/15 合格
大気概論 9/10 合格
大気特論 14/15 合格
ばいじん・粉塵特論 12/15 合格
大気有害物質特論 6/10 合格
大規模大気特論 6/10 合格

「来年もまた受ければいいし…」という気の緩みがあった結果、最後2科目の勉強が疎かになりギリギリの合格だった。

とにかく、出る分野が決まっており過去問が大事なので、過去問は最低2周することをオススメする。

正直メリットはそこまで感じなかった資格だが、工場には必ず要る資格ではあるし、コツコツ勉強できれば誰でも合格できる資格だ。工場に勤める者の義務として取得しておきたい。

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